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ログイン投稿日:2024年6月27日
まずは、保護具着用管理責任者の概要を説明します。
目次
保護具着用管理責任者とは、化学物質を取り扱う際に想定されるリスクを低減・除去する目的で保護具を使用する場合に選任が必要です。保護具に必要な知識や経験をもつ人を選任する必要がありますが、該当者がいなければ保護具着用管理責任者教育の受講者も選任できます。また、保護具着用管理責任者教育の講習では、保護具の適切な使い方や管理方法、労働災害の事例や予防策などを学びます。保護具着用管理責任者の資格を取得することで技術者としてスキルアップできるだけでなく、省令の改正から間もないことから需要が高まっている点もメリットです。なお、東京技能講習協会では保護具着用管理責任者教育を受講でき、教科書の内容はもちろん、実技講習の受講も可能です。今後、保護具着用管理責任者の資格を取得する予定がある方は、東京技能講習協会をぜひご利用ください。
保護具に関する知識および経験を有する者に該当するのは、以下の場合です。
対象の化学物質を取り扱う場合は、14日以内に上記項目の該当者の中から保護具着用管理責任者を選任する必要があります。また、選任後は保護具着用管理責任者の氏名を事業所の見えやすい位置に掲示することも大切です。
保護具を使用する際は、状況に適したものを選ばなければなりません。酸欠の恐れがある場合や、化学物質を吸入しやすい場所では吸気式呼吸用保護具を、引火性のある化学物質を取り扱う場合は、電動ファン付きの非防爆呼吸用保護具を着用しましょう。また、金属アーク等溶接作業を行う際は、指定予防係数が要求予防係数を上回っている保護具を選ぶ必要もあります。要求予防係数とは、保護具の性能を示す数値のことで、各保護具の指定予防係数が要求予防係数を上回るほど、粉塵の侵入を防ぎ化学物質の影響を受けにくくなると言われています。
保護具を適切に使用するためには、呼吸用保護具の密着性を調べることも大切です。呼吸用保護具の密着性は、フィットテストとシールチェックで確認すると良いでしょう。フィットテストで労働者の顔面に適した大きさ・形状の呼吸用保護具を選び、シールチェックで実際の密着性を確かめてください。また、アーク溶接等作業を行う場合は毎年1回フィットテストを実施することが義務づけられています。粉塵マスクや電動ファン付き呼吸用保護具を着用する際は、型式検定合格標章があるか確認することも大切です。
保護具着用管理責任者は、保護具の保守管理を徹底しなければなりません。呼吸用保護具やフィルターの定期的な点検はもちろん、保守管理状況や保管場所の確認を行い、保護具に破損や変形が見られる場合は、粉塵や化学物質が飛散しない形式で廃棄すると良いでしょう。また、フィルターの保守管理を行う際は各個人の交換状況を台帳に記載したり、交換基準を定めたりするのがおすすめです。
保護具着用管理責任者の選任後に実施される事項は、以下の通りです。
上記項目を実施する際は、保護具着用管理責任者が呼吸器用保護具を適切に着用するよう呼びかけを行います。
保護具着用管理責任者は、呼吸用保護具を取り扱う際に以下の作業を行わなければなりません。
呼吸用保護具を安全に使用できるよう、上記項目を徹底することが大切です。
保護具着用管理責任者に関する法令は、労働安全衛生規則に記載されており、2024年4月1日から施行されます。粉塵や化学物質によるリスクを予防する目的で、保護具を着用する場合の保護具着用管理責任者の選任義務や選任要件・職務内容の設定などが具体的な内容です。また、作業環境測定で第三管理区分として評価されると、空気中の化学物質の濃度が基準を上回り、作業環境として適切でないと判断され、保護具着用管理責任者による保護具の指導を実施しなければなりません。該当者の氏名を各労働者に知らせることも、法令の内容に含まれています。
ここからは、保護具に関して有するべき知識を紹介します。
まずは、耐透過性クラスや化学物質耐透過性試験結果をもとに、化学防護手袋の使用可能時間を確認しましょう。化学防塵手袋の耐透過性クラスは、取扱説明書などに記載されており、化学物質耐透過性試験結果はメーカーで開示されています。耐透過性クラスや化学物質耐透過性試験結果が確認できない場合は、メーカーに直接問い合わせると良いでしょう。
透過速度に基づく破過時間による透過性の分類は、以下の通りです。
レベル |
平均標準破過点検出時間(min) |
6 |
>480 |
5 |
>240 |
4 |
>120 |
3 |
>60 |
2 |
>30 |
1 |
>10 |
レベルが高いほど化学物質が通過しにくくなり、化学防護性能に優れていると判断できます。
呼吸器用保護具は、酸素の有無で選び方が異なります。酸素がある環境では一般的なろ過式のマスクを、無酸素または酸素が少ない環境では外部の空気を取り込む吸気式の呼吸器用保護具を着用すると良いでしょう。呼吸器用保護具は、選び方を間違えると酸欠や死亡事故が発生する恐れがあります。作業場所の空気の有無を確認して、使用環境に適したものを選ぶことが大切です。
有毒ガスや粉塵が発生する環境であれば、種類や濃度を調べて使用環境に対応できる呼吸器用保護具を選んでください。高濃度の有毒ガスや粉塵が発生している状況で呼吸器用保護具を使用すると、ろ過能力を十分に発揮できず短期間で使用できなくなる可能性もあります。また、呼吸器用保護具を効果的に使用するためには、送風機などを活用して作業場所の有毒ガスや粉塵の濃度を下げる方法も有効です。
酸素濃度が18%以上ある場合は、ろ過式の防毒マスクを選びましょう。ただし、ろ過式の防毒マスクは空気を吸い込んで使用するため、低酸素の環境で酸欠を引き起こす可能性がある点にご注意ください。また、防毒マスクの酸素濃度を確認する際は、酸素ガス検知器を活用する必要もあります。タンク型の酸素ガス検知器は、酸素濃度が低く測定される場合もあるため、タンクの奥まで測定できる酸素ガス検知器を選ぶのがおすすめです。
防毒マスクを着用する際は、ガスの種類に適した吸収缶を選ぶことも大切です。作業場所で発生するガスの種類を確認し、対応可能な吸収缶の型式を調べておくと良いでしょう。
防塵マスクの種類は、ガス濃度に応じて以下の3つに分けられます。
また、防塵マスクの種類を選ぶ際は「ばく露限界値」と呼ばれる健康面で被害や支障のない数値を参考にご検討ください。
ここからは、保護具着用管理責任者に関する災害事例を2つ紹介します。
有機溶剤への引火で、火傷を負った事例です。作業着の汚れを取る目的でスプレータイプの有機溶剤を使用し、完全に乾く前に溶接作業を始めると、飛散した火花に引火する可能性があります。有機溶剤は呼吸器に刺激を与えるだけでなく、使用する環境によっては火災が発生する場合もあるため、保護具の着用管理はもちろん、他の作業場所への影響も考えて使用することが大切です。
剥離作業で高濃度の粉塵を吸入して、鉛中毒を引き起こした事例です。引火性や有害性の少ない有機溶剤を使用していても、高温かつ密閉された作業場所では空気中の濃度が高まり、事故が発生しやすくなります。剥離材を使用する場合は、耐溶剤性で皮膚への付着が少ない送気式の呼吸器用保護具を着用しましょう。防塵機能や電動ファンが搭載されたものであれば、有機溶剤用防毒マスクも使用できますが、吸収缶をこまめに交換しなければならない点にご注意ください。また、有機溶剤のリスクを低減するためには、作業後に清掃を行い、こまめな手洗いや洗顔を徹底することも大切です。
化学物質を扱う現場での安全管理には、保護具着用管理責任者が重宝されます。保護具着用管理責任者を目指す場合は、保護具着用管理責任者教育を受講することで、技術者としてのキャリアアップにも繋がるでしょう。
東京技能講習協会では、対面式の保護具着用管理責任者教育を行なっています。
学科・実技合計して6時間、受講料はテキスト代込みで19,000円です。保護具着用管理責任者の資格取得を考えている方は、この機会に受講をご検討ください。
東京技能講習協会では技能講習、特別教育、安全衛生教育などの講習会を年間340日以上実施しております。実技講習の実施・受講をご検討中の企業度担当者さま、個人のお利用者さまはお気軽にご相談ください。
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